あなたの土地に古い抵当権が、ついたままになっていませんか?
執筆者:司法書士 藤木 茂 この資料全部お読みいただいて約68秒です。

 ここ数年来、私の事務所には、年に5件前後の古い抵当権の抹消依頼が来る。
 古い抵当権と言っても、設定してから10年や20年位を経た抵当権は、長年にわたって割賦弁済していた借入金の弁済が終了し、その結果として行うものだから、ここで言う古い抵当権にはふくまれない。
 古い抵当権とは、少なくとも設定してから70年から80年以上を経過したものを言う。
 今から70年から80年以上の昔に設定された抵当権というと、明治時代から昭和の初期頃に設定された抵当権を指すのである。
 では、何故そんなに古い抵当権が抹消されずに残っているのであろうか。
 それは、おそらく抵当権の抹消登記に緊急性を要しないことが原因のひとつにあげられる。
 担保物件の所有者は、お金を借りるにあたり、抵当権の設定をしないと、お金の融通がつかないとなると急いで抵当権の設定登記をするであろうが、お金を返済し終わって債権者から借用証書や抵当権設定登記の返却を受けると、とりあえずホッとして抵当権の抹消手続き等は、後回しにされてしまうのではないだろうか。
 後回しにされても抹消登記がされていなければ問題はないのであるが、その手続きさえも忘れさられて今日に至っている古い抵当権が数多くあるのである。
 確かに、その当時は緊急性を要しなかった抵当権の抹消登記手続きも私の事務所へ依頼に来る時点では緊急性を要する事態に変わっている。というかそうなったから依頼に来るのであろう。
 実際には、家を新築しようとして、住宅金融公庫から融資を受けようと思ったが古い抵当権が存在したため、それを抹消しないかぎり融資ができないと言われた(住宅金融公庫の融資条件の原則は第1順位の抵当権設定登記であるため)、また土地を売ろうと思って登記簿謄本を取り寄せたら古い抵当権が存在したため買主から担保の付いた土地など買えないから速やかに抹消してくれと言われた、等々である。
 古い抵当権の債権額は、たいてい数十円から数百円位の金額であるが、現在の貨幣価値に換算すれば数百万円から数千万円と言ったところであろうか。
 この話をある依頼者にしたら、「どうしよう!数百万円用意しないと抵当権は消えないのでしょうか。」と困惑されてしまったことがある。
 そこで私は「ご心配いりません。抵当権抹消にあたり債権額はあくまでも数十円であり現在の貨幣価値は考慮しなくても大丈夫ですよ。それより何より百年近く経った抵当権の債権など、もし返済してなかったにせよ、おそらく時効消滅しているものと考えられますから。」と言うと、依頼者は「ああ、よかった。それを聞いてホッとしました。ところで抹消費用の方なんですけど債権額数十円の抵当権抹消だから、数十円で済むなどということは・・・ないですよねえ。」との返答。
 今度は、こっちが少々慌ててしまい「残念ながら報酬は現在の貨幣価値にて頂戴いたしております・・・・・。」

 これらの古い抵当権等を総称して休眠抵当権と呼びます。
 休眠抵当権の抹消は、いくつかの方法が選択できますが、詳しくは司法書士に相談して下さい。
 皆さんの土地に古い抵当権がついたままになっていないか、もう一度チェックしてみてはいかがですか。


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